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異物

 ただいまと言って家に入る。思えば玄関は鍵がかかっていなかった。ハラヘッターとボヤキながら台所に入るが誰もいない。チェ、舌打ちしながら冷蔵庫を開ける。空腹をイマスグ満たしてくれるものはない。じゃ、ラーメンでも作るか、流し台を見る。カバンを落とす。ああ、俺カバンを持ったまま食い物探してたんだ。今、気が付く。流しには… 毒々しい赤い果物? イヤ、たぶん違う。植物的な外観は果物みたいだけど、攻撃的なトゲ状の突起や動物的な表皮は絶対フルーツ、植物じゃないよな的な表面の物体が… 1,2の… 5つ? 家には誰もいない。台所の流しの中に奇妙な物体。どこか禍々しい雰囲気の人を拒絶する物体。家には誰もいない、 …いない。ビュ! 流しで何かが動く気配。ナニカ? アレしかいないじゃん! アレ、動くんだ! 日が陰り台所が暗くなる。ビュ! 再びアレが動く。後ずさる、と背中に当たる何か。ふり返る「母さん!」どこ行ってたんだよ! かなり不自然に不機嫌に問いただす。「おトナリ」母は言って流しに向かう。そーいや、その流しにあるの何? かなりの努力で平静を装い母に聞く。母は流しの前でグルリ振り返りアレを手に口角を上げる。「これかい? これは…」
 今、大人になって笑い話として人に語る。 …お袋が言った「これはね…」私はゴクリと唾をのむ。「ホヤよ」 小5の俺はエイリアンの卵かと思ってビビってたけどね、アハハハ! ハ。 でも、ホント、それだけの事なのに死ぬほど怖かった、自分の住む世界が崩れ去る瞬間を見てしまった様な、世界がぐらりと回天する様な… ああ、でも一番ショックだったのは、自分が弱虫だと知っちまった、 …そこ。20131023-2
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対話

 どっこに目ぇ付けとんじゃあ! おおお、ボケ! ああ? …なんじゃ、そりゃ? 俺がブッツイタ言うんか? 俺がわざとお前にぶつかった、そー言うんか? にーちゃあん、元気がイイナァ、度胸アルナァ。ああ、この口が言うんかこの口がぁ? 痛い? 撫でてるように見えるんか? こ、れ、が、撫でてるように見えるんがぁ! ぼけぇ! お! ハハ! にーちゃん、怒ったか? オコリマチタカァ? いいもん持っとるやん。ナイフか? 刃体が、おお! 20センチ近くあるねぇ。いいナイフやん。ケーサツ行きのナイフやん。お母ちゃんに買おてもろうたかァ? それともバアチャンの年金かあ? ババアの金まきあげて買うたんか! おお! …ハハ! これさえあれば、ボクはムテキでちゅ! ボクはチュヨイでちゅ! …か? はあああ? どうした? 持ってるだけかぁ、こんかい! このクズがあぁ!! 男が怒鳴る。正午近く。駅前広場を歩く足を速めながら、母親は小声で叱る「見ちゃダメ!」 好奇心をあらわにしてソレを観察する5歳児は母親に腕をひかれ、その場から離される。先を急ぐ親子。でも男の子は振り返りまだソレを見ながら、さすがに声をひそめて心からの疑問を発する。「ねえ、あのおじちゃん、デンシンバシラとお話ししてる?」20131016-2

死後

 ある機械が発明される。今まで計測不可能だった微弱な脳波を拾い… ああ、詳しい事は私には解んない。この機械で、死んだばかりの人となら20分ばかり会話が出来る、解るのはそんだけ。で、この機械のおかげで死後の世界がある事がわかった。そこはマサシク天国で、しかも悪人だろうと普通の人だろうともれなくそこに行くらしい。自分が善人であると信じている宗教関係者は眉をしかめた。悪人と普通の人は「ラッキー!」と思った。しばらくしてこの機械の改良版が出た。死んだばかりなら会話が出来るだけじゃなく、死者が希望すれば生き返らせる事ができる画期的機能! 人類は死を克服した! けど、死者は誰もヨミガエリを希望しなかった。そう、天国を体験したらもう現世なんて… 小・中・大・その他、全ての学校の出席率が下がった。出勤率も同じ。その代り? 自死者が増えた。イキルドリョクやコウジョウシンは笑いのネタになり下がった。そして1年後… この機械について新たな事実が発表された。蓄積された死者との会話情報を分析した結果、死者は1人の例外もなく“ウソツキ”になる。さあ、天国は存在しない? あるのは地獄? それとも… 自死者数は減ったが、誰もが何時かは行くソコは、以前にも増して恐怖の対象となった。誰もが死ぬのを怖がった。あはは、シンデミナクチャワカラナイのは以前とナンノ変わりもないのにね。20131026

昇降機

 あちゃ~、ヤバいな。意識しまくりだよ。俺は仕事の関係で荷物を届けに来てるだけの、たくはいぎょうしゃ。宅配業者、わかる? 大きなとこじゃなくてこの地域限定の弱小企業、企業ってのもおこがましいような、会社。 ああ! ホントまじィ。 このボロマンションの小さなエレベーターに女子中学生。小学生にも高校生にも見えないと俺が勝手に思っただけだけど、二人になっちゃった、それが問題。彼女もう緊張しまくり、隠してるけど、パネルのエマージェンシーボタンに指かけてるのがわかる。オレ痴漢に、変質者に見える? ああ、見えるかも知んない。イケメンや、美形じゃないし、満ち足りた「女の子なんて襲いませんよ、よって来る女の子はいても、女の子を襲うなんて、アハハハ…」なんて感じも出してない。ネクラだしな~ ヤバいな~。あれ? ナンカ落とした? ハンカチ? 「あの~」 ぎゃあああ! わからない、文字に表せないすごい悲鳴。ちょ、ちょっと、あ! ボタン押しまくってる! あ~あ、俺の無罪わかってくれるよね、今は防犯用ビデオレコーダーくらい付いてるよね? 俺の無罪証明してくれるよね? ガクン、エレベーターは止まり女の子は飛び出す。俺は、俺は追いかけない。追いかけられない。15年降りてない、仕事だから、宅配の、届け先は? アレ? 何階だっけ? あれえ、俺が、このハコに入って階数のボタンを… オ シ  タ  ノ   ハ    イ      ツ     ?20121004-2

もう人間じゃない

 サエナイ地方公務員が夜遅く家に帰る。ドアを開け、室内の照明を付けようとしたその時、声がする。「灯りハ付けないでクレ」それは高校時代の友人の声。しかしどこか変だ。俺、今解錠しなかった? …友人はしばらくかくまって欲しいと言う。浴室を借りる、絶対に見るな、そういいながら暗闇の中バスルームに移動する友人は怪我をしているのか、ズルズルリと何か引きずる音がする、足をケガしているのか? 声をかけるが友人は答えない。やがてバスルームのドアが閉まる音がし、俺はリビングの照明を付ける。風呂が使えない。その一点を除いていつもの日常が過ぎる。いつもと同じ日常、しかし、バスルームのドア越しでも懐かしい友人と会話ができる、しばらくは。徐々に声は聞き取りにくくなり、沈黙の時が長くなるがね。その会話で分かった事。友人は離婚し妻子と別れ仕事も辞め、金に困りある新薬治験のバイトに参加する。どこかで聞いた話。しかしそれは… 生物多様性と地球環境の大変動予測、遺伝子操作、人類が… ではなく生命がこの地球で生き残るための大計画。そんな話だが、熱に浮かされた人間の妄想かもしれない。ある日バスルームの窓が壊され友人はいない。バスルームには大量の正体不明の粘液、繊維状の物が残されている。これどーすんだよバカヤロー! 俺の友人にはロクな奴がいない、あ! 2度ある事は3… 気を付けよう。後日、巨大な蛾が飛んで行った、そんな噂を聞いた、近所で。バスルームの修理と掃除はプロに依頼し、友人の来訪から一ヶ月後、俺の日常は戻った。もちろん世界規模でCO2排出量は増加している、海水温は上昇し、台風は凶暴化してる。自然が優しくなくなってきた? アホンダラ、たまたま今までが人類に都合がいい状態だっただけだよ。しかしそれも、それでも日常。ゴキブリ野郎やでかい蛾の世界はまだ先だ。まだまだサキ。現在五十余歳の俺が死ぬまでは人類の時代だ。 …きっと、そのくらいは。20131018-2

屋根の上

 ドライブが好き、と言っても有名な観光地へ向かう過程が好き、などと言うものでなく、純粋に車を運転してるのが好き、それが趣味です。そんな趣味の運転をしてる、あれは何時だったか… どんより曇った日、普通の住宅街を運転してた時。あれ? 屋根の上に爺さんがいる。雨漏りの修理かい? いつの時代だよ。そんな古げな家じゃあないのにね。などと思ってたら、しばらく行った先の家の屋根には婆さん。こっちには子供、あっちにはおばさん? あれ、あれ? あれっ!? 進むほど屋根の上の人は増えて、もう、気になって気になって車を止めて外に出て振り返る。と、もうそんな不思議な光景は見えない、屋根の上に人なんかいない。そーいや、すごく尖がった屋根の上にも爺さんがいたな。これは現実か? それから、再び車を走らせても、もう屋根の上の人は見えない。あ、これはひょっとして知らない間に半分眠ってたのか俺? それで変な光景を、夢を見てたのか? あー、事故らなくってよかった。車降りて外に出たのが良かったんだな。けど… あの屋根の上の人達、なぜみんな東の空を見ていたんだろう。そこに何を見ていたんだろう? って、夢の話なんだけど… 少し気になる。20121006-2

不肖

 夢だ。だって私が科学者。自分が創り出した失敗作を追っている。奴は私の助手3人を殺し、施設を逃亡。逃げる先々で罪を―無残な殺人を―重ねている。今はまだしかるべき組織が情報を操作し、かりそめの平安は守られている。当り前だ、奴は我が国の陸海軍共同出資金で委託研究してきた対人生物兵器だから。殺人の為の道具だから。殺すために生み出された野獣なのだから。でもだからこそ、私の過ちを償うために、私の罪を隠蔽するために奴を殺さなければならない。さんざん逃げ回り罪を重ねたあいつを追いつめる。人里離れた山岳地帯、大量の人員と物資を投入し、奴の戦闘能力は全て削ぎ落とした。このままでも奴は死ぬだろう、しかし… 奴と対峙する。セフティを外した銃口を奴に向ける。禍々しい姿の奴が、命を噛み裂く為の口でコトバを、言語を発する。「コロサナイデ、 …オカアサン」20131019-2

そーゆー人

 バス停にいるんだけど、バスが来ても乗らない人がいる。歩行者用信号機、青になるのを待っている? ボタンも押さずに? 後からやって来た人がボタンを押して、信号が青になっても、わたらない人。待ち合わせに最適な、駅前のあのモニュメントのあたり。決して待ち人が来ない人が… あー、そうだよそーゆー人がいるの。 …カワイソウ? そうだね。かわいそうなのかもしれない。でも、目を合わせたり、手を差し伸べてはいけない。ロクな目にあわないよ。え? ひどい目に会うんだからロクな目にあう、か? オー! ニホンゴムズカシイデス。知るかよ! そんな事! …でも、そーゆー人たちが何人か集まっていて、ゴニョゴニョボソボソ話をしてたら聞き耳だけは立てといた方がいいかもしれない。さっきも、バス停で「 …おおおこおおるうぅうよお。おうこおる。にせええんんじゅううさねん、じゅううういちいいがっさああんじゅううういいちち… 」なんて話してるのを聞いちゃった。あーゆー人は、けっこう未来の事も… あ? 待てまてまて… 2013年11月31日?… ★☆★@! あ、ああいつらぁ! バ、バカにしゃがってぇ!20131012

犯前逮捕

 防犯カメラ。昔は、監視カメラって言ったっけ? 某小説ではディストピアの象徴のように使われていた。でも、今はいたるところにあって、ないのはトイレの中くらいと思っていたら、さすがにカメラじゃないけど、動体センサとかの監視システムはトイレの中にもあるんだってね。おお、「タタエヨ秋葉原!」情報科学技術産業はスバラシイ! でも、残念ながら今のところは犯人の特定や、犯罪の立証に役立つだけで、文字通りの防犯にはならない。まあ本当は役立っていても「防犯カメラあるから犯罪やあめた」って数は統計とれないもんね。けど、そのうちなるよ、絶対! フィードフォワード制御。犯罪の映像が蓄積され、分析され、挙動不審は数値化され、犯罪を為そうとする人間がどんな時にどんな行動を取るのか、予測可能となる。つまり犯罪フラグが立つのが解る。犯罪者が犯行を行う前にソレを感知した防犯システムが警察に通報、犯罪は事前に阻止、おお、おお! 「タタエヨ秋葉原!」まさしく真実の防犯カメラ! …あ! でも、捕まえた犯人ってまだ犯人じゃない、よね。そこが問題だ。20130924-3

変造記憶

 お前ね、仕事はともかく、こんな席でもあんまし言いたいことバッカ言って、私を苦しめると、私は何するかわからないよ。酒が足りてないんじゃない? そーゆー風にさっきっから、くどくどくどくど、しつこく人をバカにしてると… あー …殺しちゃうよ。 …え? 殺す? …俺は。そうだ、殺しちゃったんだ、 …人を殺しちゃった?! イヤイヤイヤ、 …ないよ! ないに決まってるでしょ! そんな事。だって、そーならこんなとこにノウノウと… あ! あああああ、ハハ、 …ある。あった。 …ナイショだよ。昔、コドモん時だけどね、人を殺した事あったわ、 …あんだ俺。思い出した。 …親父の田舎に住んでた、小学3年生、だったカナ? 私ン家のちょっと近くには海があってさ、夏に友達の親が一緒にどう? ってんで近所の子何人かと海に行った。そう、私の歳だよ、その時代は、そーゆー知り合いの大人が子供を引き連れて海や川や山、いろんなとこに行くってのがフツーだった。そーなの。いちいちイベント保険に入って誓約書を書いてなんてことしなくても大人は子供をいろんなところに連れてったの。今そーゆー事がなくなったのは… そだね、俺のせいかもしれません。ま、でも当時はそうだった。だから海に行っても、大人は「気ィつけて遊べよ」そんでおしまい。自分達はビールなんか飲んじゃってね。そこは砂浜、じゃなくてちっと石がごろごろしてる磯? そんなとこだった、波も静かだし、海水浴じゃなくて磯遊びだもんね、大人も安心。で、俺たちは、カニ捕まえたり、ガキが海でやるよーな遊びをやった。そんで、テンションあがってバカするのもガキならでは。そう、バカしたのは俺。俺がカニだかフナ虫だかを取り逃がしたか、そんなことで他の子が「ノロマァ!!」 最初はヘラヘラ笑ってスルーしてたのよ、今みたいにね。でもガキってしつこいでしょ、加減ってもんを知らないでしょ、いっまでも言うのよ、いつまでもいつまでもいつまでも… 今のお前みたいにっ!  あ、ごめんね、ごめんね。私興奮し易いタチで… …だから、気が付いたら、空を見て、「ああ、青いな、雲が白いな」やけに青と白のコントラストを感じて… なぜか俯いていたトコから、空を見上げるまではスローモーションなのよ、記憶が。気が付いたら手頃な石を持ってた、左手で。右手はひつっこい奴の二の腕を掴んで引き寄せて… なぜ顔バッカし狙ったんだろう? 俺、そん時視力がどんどんどんどんどんどん悪くなっていて、このままいくと失明するんじゃないかって恐怖があって、だから、感覚器官が欠損するって事が最高の恐怖だったのかもしれない。だから、だから相手にもオナジ恐怖をアジあわせてヤローって… 考えたのかな? で、そこを狙ったのかな? わからん。わかんない。殺そうと思った? それもわかんない。空は青くて雲は白くて手は赤かった。でさあ、逆上して掴んでる石で殴ったから、ほら、俺の指中指が歪んでない? 小指の方にヘシマガッてるでしょ、でも痛かったって記憶ないのよ。指も石も一緒くたに相手の顔面にぶつけてぶつけてぶつけてぶつけてぶつけてェェェェェ!  …ああ、遠くで悲鳴が聞こえたよ。でも。でもね、こーゆー事って覚えてないの。小学生だって、コンな事しでかして、ただで済むわけないよね、家裁だ児童相談所だナンカはあったんだろうけど、俺、憶えてない。俺、ホントに覚えてないの。なんかグッチャグチャに聞かれて確認されて、ゼンブ吐きださせられて、頭の中が空っぽになった所へ「実はコーだったんだよ」と突っ込まれた事を信じた? だから今私は、自分のした事… あああ、まー、だから、だから… なんだっけ? ああ、空が青いなーって思ったのよ。雲が白いなー、左手が赤いなーって。不思議とだからか? 夏になると、昔自由な時があった、ホントーに自由な時があった、って感じる時が、ある。オレハホントウニジユウナトキヲモッテイタコトガアルって。ああ、空は青かったな、雲は… そうだ、俺はオモイダシタ… オモイダシテシマッタ…
 ああ、昨日はすいません。私、酔っ払っちゃってたでしょう? ごめんなさいね、迷惑かけなかった? ごめんね、ごめんね、ごめんなさいね。 …え、私が… そんなこと言っ… ハ、ハハハハハ。そんなのウソですよ、嘘ウソみんな嘘。私がそんな事できるわけないですよォ、人様を殺すなんて。そー、嘘。ウソ嘘。 …え? えええ! 真に迫ってた? はは、困ったな、 …実はね、そう、 …それはホント。秘密ですよ。でもね、私ね、殺人罪ではないの。未成年? ちゃうちゃう、そんなんちゃう。私が殺したのはウチュウジンの子供だったから。ニンゲンじゃなかったから。そう …だから、ダイジョウブ、私は人殺しじゃない、私は違う、わたしはヒトゴロシじゃない、ワタシハ… 20111103-5

深夜×1

 これはすごく微妙で、デリケートな問題だから、職場の飲み会の後に、個人的に呼び出して伝えるべき事じゃない、そー思う。できれば私も避けて通りたい、通りたかった。先輩風吹かせて言う事じゃない、とは思う、わかってる。でも、でも言わなきゃ、あなたに伝えなきゃならない、とも思ったんだ。だから、だから不快に思ったならゴメン。君がそう意思表示してくれたら、すぐ止める、あやまる、謝罪する。だから君も全て忘れて―それが多少しんどい事であっても―明日からは今までどおりに勤務して欲しい。もちろん、言った私にも以前と同じように、とはいかないだろう。私には、私には多少不快の感情をあらわにされても… 仕方ないとあきらめる。だから仕事の方は、何とか頑張ってほしい。年々オーダーはハードになり、予算は先細りだ、けど、この仕事、日本の、いや世界の未来が掛かってる仕事だ。教育って… あ、いや、まあ、関係無いか。ここでは。ハハ、ごめん。 …そんで、つまり、言いたい事って言うのは… ああ、ほら、この前4年ぶりのお客さんが来ただろ。君と昔の話をしていて、お客さんに悪意はなかったと思うけど、「まだ結婚してないんだ」みたいなこと言われてたでしょ、君。そんで、あなたが、「私なんか、一生独りで…」みたいなこと応えてた。あれ、違うから! ホント違うから。あのお客さん、“君ほどステキな人が、まだ!”ってオドロキの意味だったろうし、いや、だから、違うって! 君を傷付けるとかそーゆー考えは思い至らないというか… そんな意味じゃなくて。だって、君は…  君は、美人だし、可愛いし、キュートだし。 …仕事だって出来る、有能だし。そりゃあ、少し、いやとても頑固で、ズボラな面だってある。あるのは知っている。 …怒るな、蹴るなよォ。悪かった、あやまる、ゴメン。 …でも、頑固でズボラでしょ? OK。けど、けどそれを補って余りある良いところがあるでしょ。だから… 自分をダメとか言わないで、そんな悲しい事言わないで、絶対に、絶対に君の事を素敵だと言ってくれる人は現れるから、現れなくたっているから、だってホントに君は素敵で… え? 「だから、知ってます」 …そっか、それなら、 …いいんだ。ハハ いいんだ、それなら。20131012-2

足音

 職場の飲み会が終わり、2次会も終了。同僚の女性を最寄りの駅まで送り、でも勇気を振り絞って「家まで送るよ」静かにうなずく彼女。おおお! ああ、駅から歩いて7分は夢のよう。そして…たどりついたマンションの前で彼女が「コーヒーはお好きですか? もしよかったら」ああああああ! 「 …! 喜んで!」あー、もうカッコ付けたセリフで、何とか彼女の部屋へ上がり込みたい… なんてスッ飛んじゃいました。あああああ! 相思相愛っ!? 「心外だな、俺だって男だ、オオカミなんだぜ」とかナントかカッコいいセリフ(どこがカッコイイのかシラフになったら不明)も考えたんだけどねっ! ま、いいや酔っ払ってますから。「おじゃましまーす」と靴を脱ぐ。どこがオオカミだ。そして、コーヒーを飲んだ、彼女と話し、見つめ合い、そして、あああああ(冷静に考えると俺ってうるさい)、必然的に部屋の電気を消し… 2人はひとつのベッドで… ドン! な、何だ? ドン! 天井から音がする。彼女の部屋は最上階だぜ、屋上で誰か暴れて… 今のご時世屋上に簡単に立ち入りは… ドン! かなりの音と振動。無言で天井を指し示す俺、首を横に振る彼女。原因はわからない? 「君を溺愛するお父さん生きてる?」なんて聞けないし… そんなんじゃないのは俺にもわかる。わかるんだ俺。でも、覚悟は、つーかやる事は決まってる。彼女を愛してる、なんて意識より服を脱いだ彼女のビジョンが俺の理性をぶっ飛ばしたんだけどね。ドン! ドン! ドン! 規則正しく起きる地響きの様な足音を聞きながら… 私たちはひとつになりました。そうさ、鬼畜さ! んで、帰り。タクシーを降り家までの道を歩こうと… ドン! あ? ドン! ドン! あ、あの足音が、近付いてくる、後ろから。常夜灯に照らされたアスファルトが、ドン! 地響きと共に少しへこむ? アイツが追って来る? ドン! ドン! ドン! やっぱ溺愛するお父さん? ドン! ドン! ドン! 付いて来ちゃったの? 俺に? ドン! ドン! こ、殺される? このまま家に帰れば、ウチの天井から、ドン! それは絶対阻止! ウチ木造、死んでしまう! あ! 俺は道のわきにより「ドンドンさん、お先にどうぞ!」と声に出して叫び頭を下げる。ドン! ドン! ドン! 地響きは私を追い越し、先へ常夜灯の照らさぬ闇の先へ、ドン! ドン! ドン! 消えて行きました。はは、ガキん時に読んだ「妖怪図鑑」が役に立つとはね。 …んで、その時の彼女とはその後、あんましうまくいってない。別れるかもしんない。 …リアルだろ? 20131011

終幕

 夢を見ている。夜の繁華街、路地裏。警察車両の赤色回転灯が回る。あの美人がキスできるほどに近付き、向き合う私に触れ、彼女が私の左手の小指を握る、笑って。握った小指を通常曲がる方と反対の方に一気に曲げる、力一杯。もちろん小指は折れる。痛くはない、イヤ痛いのは俺の財布か? 義手の修復にはそれなりの金が掛かるのだ。もちろん時間も。直すには時間がかかる、どんなものでも。どんなモノだって… ココロも… だからなんだってんだ! 哀れめと言うのか? カワイソウ? 俺を、警官に拘束されながらも俺を罵倒する彼女を? 冗談じゃない。依頼者にこのアクシデントの代価は必要経費で請求は可能か… 無理だ。無理だよ。というより請求しないだろう俺がいる。記録は俺のオフィスで眠る。彼女はそれなりの咎を負う、けど、俺の小指を折った罪は正式には記録されない。で、サヨナラ。俺はどうすればいいんだ? 事件に関係する全ての人物が退場し、俺は左手の能力を開放する。モーターのリミッタを切り殴ったんでコンクリートの壁には穴が開き… ああああああ! クソッタレ! さっさと逃げなきゃ、この壁の修理費が俺に回ってくれば今回の仕事は赤字。おのれを制御することの必要性は学んでたはずなんだが… やってらんない事が多過ぎる。この街は。 …涙が、涙がちょちょ切れ出るぜ! マッタク 20131009-2

Re.人影

 朝、家を出て歩きだす男を2階の窓から見送る。男は歩みを止める。窓は曇りガラス、仔細は解らないが、振り返り、こちら―この家の2階の窓―を見ているに違いない。そう、私を見ている? しかしやがて男はいずこかへ歩み去る。これで今から15時間ほどの安息が得られる。男が再び現れる夜までの決して長くない時間。そう男は帰って来るのだ、私が独りで住むこの家に、夜遅く。何回も施錠を確認した玄関のドア、もちろん玄関錠のシリンダー交換は一度や二度ではない。でも、男はドアを開ける音を響かせ入って来る、私の家の中に。まるで、自分の家のように。私を無視し、家の中を歩き回り… 隣家には神経質な犬がいる。ウチを訪ねてくる人にも吠える犬が。あの犬が… 吠えない。てなずけた? 犬も恐れる? いや、犬にも感知されない類の… いわゆる霊能力者と言われる人たちにも相談した。けど、家の近くまで来ただけで、歩みを止め帰ってしまう。「とても私の手には…」そう言い残して。そして今日もあたりまえのように男はやって来た。いつもより遅く、ふらつきながら。そしていつもと違う行動に出る。家の全ての部屋を回り、戸を開け覗き込み、何かを探しているのだろうか? やがてもう見ていない場所はなくなる。そこで男は大きなため息をつき、いつものように消えた。そして朝。玄関のドアが開く音だけがする。昨日と同じ窓から外を見る。しばらく歩いた男は立ち止まる。窓は曇りガラス、仔細は解らないが、私は確信する、男は振り返りはしない。20131007

彼女

 ベッドの上、彼女の髪に指をからませささやく。「まさか、こんな事になろうとは…」「嬉しいクセに、」フフと笑い彼女は私の身体にまわした腕に、腕に力を込める。肌と肌が密着し、ああ… 仕事の関係で知り合った女性と愛し合い、でも私には妻がいる、そんなイマドキは地上波ドラマでもやらない設定に… なってしまいました、ハハ。「俺は、地獄行きだな。死んだら地獄行きだ。妻を愛してるのにこんな事をしてる。そして君もこんな俺に尽くしてくれてる。君と俺の奥さんは天国行きだ。サヨナラ、その時は天国で奥さんと仲良くしてくれよ。」イヤと小さく叫んで彼女は続ける。「残念、私も地獄行きなの。この前言ったわよね。奥さんが亡くなったら私との事考えてくれるって。言ったよね。私こう見えても車に詳しいの。奥さんイイ車に乗ってるのね。ブレーキホースに少し細工、専用の工具と知識がある人には案外簡単なの。もちろんそんな事で死亡事故なんて、ドラマじゃあるまいしね。でも、 …3時間前あなたの家に電話したの。無事なら、奥さんが無事ならもうここへ… ああ、ダメだったみたい。平常心を失った状態で車の運転はよくないわ。 …よくないわ。」遠くに、いや結構近く? 緊急車両のサイレンが… ベッドの上、泣いている彼女を抱きしめている俺がいる。でも、考えてる事は妻の無事でも彼女との未来でもない。どうするどうするどうするどうする、自分の事だけ。20131005-2

人影

 朝、出勤する為に家を出て歩きだす。ふと振り返ると自分の家の2階の窓が目に入る。曇りガラスの窓辺に佇む人影が見える。私を見ている? 独身の私が出てきた家には誰もいないはず… 不法侵入者? 泥棒? いや、今までそこにいて戸締りも確認して出てきた家、誰もいないはず… なのに。引き返すべきか、家の中を確認すべきか? でも、今までいて独りだったはずの家にもどって何を確認するのだ? あ、犬は吠えたか? 隣家には、ウチの来客にも吠え狂う犬がいる、夜吠えだすと頭に来る事もあるが良い防犯装置だ、と考えて文句は言ってない。あの犬は吠えて、いない。で、だからその日は酔っ払って帰宅した。そうでなければ家に入れるものか。案の定、家の中には、 …誰もいない。窓の枠に引っ掛けた洋服も、ない。朝のアレは私の目の錯覚だったのだ。そう、 …錯覚。翌日、家を出る、ふと振り返り昨日と同じ様に自分の家の窓を見たくなる。けど、見ない。見たら、振り返ったら確実に人影を見る。そんな確信がある。20121228-2

プロフィール

Author:KU2
 改行が嫌いです。嘘とイイカゲンが好きです。…改めまして、FC2ブログへようこそ!

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