2015/03/07
「カンケリ」って… 知ってる? 鬼ごっことかくれんぼとポリティカルゲームを合体させたような遊び。俺が小学生の時よくやった。 …よくやった? ウソだ、これは地獄の様に怖いゲームだ。やる時には参加者全員にそれなりの緊張感が走った。そんなに気安くできるゲームじゃ無かった、俺だけか? まあいい。用意する物はスチール缶ひとつ。飲料水系の空き缶でもOKだけどアルミ缶はNG、潰れるからね。ルール? ベースとオニを決め、オニ以外がベースに立てたアキカンを蹴り、オニがアキカンをベースに立てるまでの間にみんな隠れる。鬼はみんなを捜し、見つけたら名前をコールし、ベースに立てたアキカンをふむ。これで見つかった者はベース近くに拘束状態となり、オニ以外全員が拘束状態となるか、誰かがオニにコールされる前にベースのアキカンをキックするまでそのまんま。ハードだぞ! オニは自分以外全員と戦うのだ。それも、サッカーみたく1試合90分でもなく、野球みたくコールドゲームもない。みんなが飽きるまでこれが続くのだ。ポリティカルゲームの意味、解るだろ? …地獄だろ。しかし、そうは言っても子供の遊びだ、タイガイは日没まぎわでホイッスルが鳴る。もちろん比喩だ、笛は鳴らない。
前置きが長いが、これからが本題だ。ある夏の日、俺はオニじゃなかった。公園のドーム状の遊具の中に隠れた。ベースは近くアキカンを蹴り拘束者をフリーにするチャンスもあったが、オニが比較的容易に探索できるエリアでもある。小心者の俺だ、よく状況を見極めてからでないと… 外の様子をうかがう俺の横、隣に人がいる! 不意に気が付く。俺と同じ? 小学生? 半ズボンにツバを後ろに回した野球帽、ちょっと小デブな体型は俺を安心させた。でも、何かヘンだ。大人になった今ならその原因がわかる。それは“不気味の谷”だ。人間に近い格好をしている人間じゃないモノへの恐怖心、それがある。でもそうとは知らずに? 俺が気付いたと知らずに、その子は俺の方に顔を向け、不器用にニカッと笑う… その大きく開いて笑った口は、口の中には何もなかった。真っ暗! 薄暗いドーム状遊具の中でも暗さがわかる闇。暗黒が小学生の皮をかぶって、口から暗黒があふれそうになって… グガ! だか、ヒイイ! だか、何を叫んだかわからない、ドームを飛び出た俺はコールされ拘束者になりその日のゲームが終わるまで、ホイッスルが鳴るまで拘束者だった。ホイッスルは比喩。
で、あのドーム状遊具の中にいた子供が誰かは解からない。他の遊びのグループの子供か? 失礼な話だけど、当時珍しかった外国人の子供? って事もありうる。俺の知らない仲間? 俺、人の顔覚えないからね。まあ、顔と名前を知らないでカンケリは出来ないけど… まあいい、彼はカンケリの最中、ヒトリ家に帰ってオハギを食って来た奴、俺に笑いかけた時はオハギが口の中にメイッパイ入っていて… そう思う事にした、いや、そうなんだ。そうに違いない。そうじゃないと… 思い出してしまう。奴の口の中から、チキチキチキチキと聞いた事のない乾いた音が聞こえてきた事を… 20150305-2+