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破我の里

 父の実家に行く時に使うその鉄道は、一面に広がる水田の中をほぼ真直ぐに進む2両編成の電車で、それは緑の海を行く船の様だった、と記憶しているのは私たち兄弟がソレに乗るのがだいたい夏休みだったから。その年もいつもの年と同じ電車に乗ったのだが、今年は2歳上の兄と2人だけなので、旅行ではなく冒険の気分だった。新幹線の某駅で乗り換え。冷房の効いた車内から、狂気さえ感じる暑さの駅のホームへ降りる。そこから、急行でも40分、途中に1駅停車する他は水田の中を走る走る。遠くに見える山は島のように見える。途中の停車駅で3人連れが降り、その車両の乗客は私達を入れて7人となった。走り始めて10分後? 外を見続けていた私は、その水田の遠くにひらひらと白く舞うモノを見付ける。カカシ? とも思ったけど今の季節からカカシは変。 「兄ちゃん、アレなんだと思う?」 兄は「はあ?」と応えてそれを見るため、自分のリュックサックから双眼鏡、5年生の11歳の誕生日に買ってもらった自慢のそれを出してピントを合わせだした。電車は走り続けているが、かなり遠くなのでソレは見え続けている。全開の窓から、身を乗り出す様に、ああ、その頃の電車には空調は無くて窓が開けられたの。それで走っていればそれなりに、多少は涼しい、とは言えないけどガマンは出来た、暑さを。 「 …あ。わかっチゃった… 」兄は、今思えば変なイントネーションでそう言って、双眼鏡を車外に投げ捨てた。「ナニすんだよぉ、もったいなぁ~ で、アレ、ナンなの?」 兄に聞いたけど「おまえは知らラい方が… うふ」 それが兄と交わしたまともな会話の最後だった。それから頭がいたいとか音がうるさいとかワケのわからない事を言って兄はうずくまり、終点に着いて、駅に迎えに来ていた伯父の前で倒れ、そのまま父の実家近くの病院に入院した。迎えに来た両親のうち母と私が家に帰り、父は夏休みが終わる頃、帰って来た。父だけで。それから兄には会っていない。4年後の夏、私が中学生の頃。一時帰宅で父の実家にいた兄はふらりと姿を消し、発見されたのは実家から5キロ離れた水田の真ん中、だった。死に顔は安らかだったと言うが、私は見ていない。 …見せてもらえなかった。思えばその兄が横たわっているはずの棺も2メートル近く… 兄がそこまで長身だった記憶は無い、いや、無かった。4年間で… のびたのか?
 今、あれから18年経った。そんなだから、アレが何かは考えない様にしている。考え始めると… 頭がいタいしね。くふ 20170520-2
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Author:KU2
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