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夜の海

 残業してる時。フロアの照明は全て消えてる。俺のデスクだけがモニタのライトで明るい。これだけ、後3枚分データを打ち込めば帰れる。 …後2枚。 …1枚。 …OK! おしまいっ! っと。PCを終了させ、椅子から立ち上がり気が付く。 …変だ。まず、音がしない。都会の喧騒、っていうか、空調の作動音、外を行き来する車の駆動音。都市が生きてる、そう思わせるいつもしてても気にも留めない音が、ない。そして暗い。そんなに広いフロアじゃない、はずなんだ。デスクが8×2でチーフデスクが窓側に+1。マネージャーデスクは通路の向こうより窓側に、反対側にはファイルキャビネットと会議用・接客用コーナー… そしてフロアと外部通路を隔てる壁とドア、照明は消えてても非常灯の灯りで出口までたどり着ける… 今までは。 でも今夜は… やけに暗い。非常灯の故障? このフロア全部が? モニタの明るさに慣れていた目が暗闇になれても、壁が、窓が見えない。どこまでも続く無限のオフィス? なわけないよね。床に埋め込まれた非常灯は点灯している。その緑色の光を頼りに出口があるだろう方向に歩き出す。出口が無いなんて、そんな事があるはずがない、よね。
「『 …あるはずがない、よね。』なんじゃこれは?」チーフが付き返すA4コピー用紙にボールペンで書かれた、紙片。「落ちてたんです。タチバナのデスクの下に」コピー用紙を受け取り、報告を続ける男。「タチバナの退出の記録はありません。金曜日の夜定時で退社しなかった事もわかって」明らかにいら立ってチーフは男の報告にかぶせる「アイツはナニしてたんだ? 見積書作らんで“オハナシ”を書いてたのか? ここは職場だぞ!」俺に怒ってもショウガナイだろう、タチバナに言ってやれよ、と男は思ったが声に出しては言わなかった。 マッタクもう… チーフの怒りはまだ納まってはいなかったが、「では、失礼します。9時25分からミーティングがありますから」男はそう言って下がった。タチバナの残した“オハナシ”は古紙回収BOXに入れられた。 …だから、その後、残業中にそのフロアで立ちつくす身長2メートルオーバーの緑のタチバナを見た! とか、電源タップを増設しようとデスクの下にもぐり込んだらセコセコ歩く身長15センチの緑のタチバナ… でもそんなうわさも長くは続かなかった。 …なぜって? 会社がつぶれちゃったから。20171020+
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Author:KU2
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