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不知

 大学に入ったばかりの頃、だったかなあ。 安下宿=四畳半一間、台所付き、風呂無し、トイレ共同=って今考えると信じられない所に住んでいたの。え? お風呂無しでどーするの? って銭湯に行くんだよ。 銭湯、共同浴場、お風呂屋さん。劣悪な環境? う~ん、その頃はそれが当たり前、だったんだけどなぁ。 まあ、酷くても若かったから何とかなった、のかな? はは。 で、そんな下宿に同期の友人が遊びに来て、食べて、喋って、酒飲んで、音楽聴いて… そんで遅くなって終電も無くなる頃、泊まってくか? って僕が言うと「ああ、そうだな。そうさせてもらう」って言って「ところで、煙草ある?」って聞くのさ、そいつ。そう、その頃はみんな喫ってたんだ。ああ、あるよ、ハイライトなら、って答えると、「う~ ちっと行って買ってくる。俺ブンスタだから」ブンスタはセブンスターって煙草の略称。そんで僕のサンダルつっかけて深夜、下宿を出てって… それっきり。あれ? やっぱ、気が変わって帰っちゃった? 酔っぱらってたしね。少しは心配したけど良いトシした大学生だからそんなに心配しても仕方ないや… ってんで寝ちゃった。ケータイ? あの時代にはそんなモンないさぁ。でも翌日大学にもきてない。マズイ事にでも… 他の友人に聞いたら「ナカガワ? 誰それ?」なんちゅ~ハクジョウな奴等、と思ったがよく聞いても真面目な顔して繰り返す。まるで最初からアイツがいなかったみたいに。アイツの家、実家から通ってたんだけど知ってたんで行ってみた。2回くらい遊びに行ったから。でも、家は同じでもかかってる表札が違う。 …インターホンは押せなかった。こんな風にして友人が1人消えた大学1年の夏。それは失踪とか拉致とか、そんなレベルのモノじゃないもっとこうナニカ… 何なんだろう? ずうっと考えているんだ、アレは何だったんだろうって… 消えた友人と僕のサンダルはそして残ったアイツの靴はアレが夢じゃないと教えてくれる。そう、絶対アレは夢でも俺の思い込みでもない。アイツの靴を俺はまだ持っているんだ、あの靴を。 …で、まあ、そうして、あれから38年が過ぎ、過ぎてしまえばそれはアッという間で、俺はこうしてカオルちゃん、君のお母さんの妹と結婚して子供は出来なかったけどそれなりに幸せで、もう定年退職で今までは忙しくてゆっくり話も出来なかったけど明後日からは、こんな風にカオ、奥さんと… ああ、ゴメンゴメンこんな話しても面白くはないよね。じゃ、ごゆっくり。もう奥さんも下りてくると思うから…
 そう言ってハルヒト叔父さんはリビングを出て言った。読みかけの小説が気になって、と笑いながら… しばらくしてカオル叔母さんが2階から下りてきた。テーブルの上の湯呑を見て「ごめんなさい、お待たせして。 あら、茶器のある場所よくわかったわね?」 いいえ、ハルヒト叔父さんが、と応えたのだが、叔母は怪訝な顔をして「 …誰?」20180211-2
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