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相続

 個人の住宅にエレベーターってのも最近では珍しくないらしいけど… これ、業務用だよな、しかも病院用? ストレッチャーが乗るほど広いし。そんで、地下、5階? もっとか? 仕事休んでこの大邸宅に来たのは、正直に言って、金の為と好奇心。 …手紙が来たんだ。遠縁の親戚、親父の異父兄弟の兄貴の一人、と名乗る人物の代理人から。でも、もうウチの両親とも死んでるからそれがホントか、なんてわからない。けど、行くよね、俺は来た、余命イクバクもないその人間の最後の話を聞くだけでかなりの遺産 ―もちろん、俺にとって、だけどね― が手に入る、とその手紙に書いてあったから。地下5階の通路は明るく、けどそっけない、ホント病院の通路みたい。まっすぐ進んでドアに着き当たりソコが病室、か? 中はほんとに病院の集中治療室、たくさんの機材と装置に囲まれたベッドの上に1人の老人が寝ている。というか、固定されている、チューブとケーブルとベルトで… ここまで案内してくれた代理人を名乗る男を振り返ると、深くうなずき、ベッドの横、モニター脇の椅子を勧める。これだけの設備を有する個人宅なのに、それは学校の体育館に並べる様な折りたたみパイプ椅子なのが笑っちゃう。俺はその椅子に座り、代理人は出ていき、広い病室にベッドの上の男と俺だけになり、老人は俺に向けて話を始めた。 そもそも、事の起こりは…

 6日が経過する。

 …という訳で、私ももう長くはないと覚悟が出来たのでこうして次の代に、後進に道を譲るため君を選んで私の全てを君に譲るのだ。そう、出した手紙の贈与額は嘘だ。君には私の全てを与える。でも、そう書くと、君は警戒してここに来てはくれないだろうから、ね。話はこれで終わりだ。 男はベッドに隠す様に備え付けられていたボタンを押す。しばらくして代理人が部屋に入って来る。「御済みですか?」 ああ、私は答えてパイプ椅子から立ち上がる。久しぶりの運動。伸びをし、首を左右に振る。ああ。この身体もなかなか良い。ベッドの上の老人は目を見開き、信じられない! といった表情。でもその瞳もやがて輝きを失い、モニターの波形はフラットに。私の全てを譲られた男が、今死んだ。20180308
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Author:KU2
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