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赤いテント

 多くの人々が近隣の小学校に避難する。体育館は無事で充分にスペースはあるのだけど、建物の中にいたくない、と言う人も多くいて校庭にテントが並ぶ。あんな事があった後では仕方のない事。 そして気が付くと校庭の隅に離れた所に赤いテントがある。人の気配はない、いつだれが設置したのか、誰のテントかわからない。夜中に隠れるように煙草を吸う人が、小学校は敷地内禁煙なので本当はダメなんだけど、まあ、こんな状況で杓子定規に物事や規則を押し付けても… という事で夜中に喫煙者が灯りの点った赤いテントを見た、と主張するのだけれど。それでも、長い時間が過ぎてもそのテントの持ち主が誰か、はわからない。 …そしてしばらくして…  噂が流れる。避難所生活に疲れた男が、家族を失った女性が、不安に耐えられなくなった子供が、赤いテントを訪れる。幸せな時間、失ったモノをもう一度手にすることが… 全ては噂。 だって、赤いテントから出てきた人はいない。 けれど復興は長引き支援は先細り、時間は経っても明るい未来は現れない。皆疲れて、みんな哀しくて、ミンナ不安で… それで、一時でもこの重荷を降ろせたら、と、思った時に赤いテントが、そこにある。そして皆、それぞれの理由で、テントに入る、入ってゆく。
 …それから、“元通り”を夢見た5年、その日暮らしの10年、絶望の15年を経て、地獄の20年目が過ぎた。そして最悪の25年目、これ以上は悪くならない、なぜなら…
 今、現在この国に人はいない。いないけど、時たま、ムカシ避難所に指定された小学校の校庭に赤いテントがそのままあって夜灯りが燈る事もあるって、そんなウワサが海を越えた国の子供達の間で飛び交うのはなぜ? 誰もいない無人の国に赤いテントがあって時たま灯りが燈る… ソレを… 誰が見たの? 難民となった、故郷を捨てた、祖国に捨てられた人達? 彼等が伝えるソレは… なんなの? 20180402-3
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Author:KU2
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