FC2ブログ

新世界

 衛星軌道上から見るその星、表面積の80%を占める海は青ではなく、まさしく水の色、ピーコックブルー。陸地の植物が繁茂する地域の色はエメラルドグリーン。「惑星パステル、って感じですね。」降下要員の1人が言う。「楽園、だといいわね」もう1人も呟く。長い長い旅をして、初めての太陽系外惑星、そこが人類の移住可能な環境だったと知った時の驚きと喜び! そして幸せ。大昔の映画の様に宇宙からの脅威を前にして初めて団結するのではなく、新天地の、人類の新たな可能性を前に人類は一致団結した。多くの破滅の危機を乗り越え、時間と空間の壁を破り、技術の限界を超え、人類は今ここにいる。美しい星を回る軌道の上に。初回降下要員は3名、見た目が美しくともどのような危険が待ち構えているかはわからない。衛星軌道上からの調査で植物 ―の様なモノ?― の存在は確認できたが、大型動物の存在は確認されていない。その様な惑星への降下、最悪の場合、母船には2度ともどれない。未知の動物、細菌、ウィルス、いや、人類の知識で認識出来ない様な未知の脅威さえ想定して、我々はこの星に降りる。順調にいけば、降下から1ヶ月後、我々3名はヘルメットを外す。この星の空気を吸う事になる。
 アカムラサキ色の空の下、エメラルドグリーンの草原、そこに降下艇は着陸し、居住スペースを拡張しそのまま第一キャンプとなった。慎重を期して、外気呼吸は90日後となった。そして今日がその日。私がその最初の1人。2人は気密服まま私の状態を観察記録する。この惑星の朝、オレンジ色の太陽はすでに昇り、淡い色の植物が風にそよいでいる。「U.C.1207/3/23/14:25 もう地球時間で生活するのが苦痛になってきた。さて、記念すべきこの星の大気を最初に吸わせてもらおう。 …ロックを外す」息を吐き、ヘルメットを外し、この星の大気を吸い込み、吐き出す。 ! な、なんて… 私を中心に同心円状に、エメラルドグリーンの植物が枯れていく灰色の輪が急速に広がってゆく! やがて空も、空の色もグレイに… モノクロームの世界が広がって… そして… 「U.C.1207/3/23/14:45 ヘルメットを外した私に異常はない。しかし、世界は、この星は… 」母船からの緊急通信が入る。内容はわかっている。私から広がったモノクロームの世界がこの星すべてを覆ったのだ。 風は止んでいる。 今、この星は死んだのだ。私が地球から持ってきたナニカのせいで… 20180408
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

プロフィール

Author:KU2
 改行が嫌いです。嘘とイイカゲンが好きです。…改めまして、FC2ブログへようこそ!

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR