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幻影

 気が付いたら、水抜き穴を、近所の道沿いの擁壁の水抜き穴を必死にのぞき込んでいた。どこかでコーンと小さくケモノが鳴いた。手にしてたオミヤゲ、某4コマ漫画の酔っ払い父さんが持ってる寿司の折り詰め、じゃない。レジ袋に入ったタコ焼き2パックが無くなっていた。背広は泥だらけだった。
 ブツクサ言いながらも家に帰る。タコ焼きが無くなったので、カップラーメンを作る、事にする。ケトルに水を入れ、ガステーブルに置き、カップの包装を破りふたを開け、具と粉末スープを取り出し、封を切る前に軽く振る、振る、振る…
 気が付いたら、まとわりつく蠅や虻を、ギョッとするほど大きい蠅や虻を払っていた。避難所となった小学校の校庭の焚き火の前で。どこかでコーンとケダモノが鳴いた。 …ああ、そうだった、あの災厄で… もう家も職場も無い、焚き火に掛けたヤカンの湯で作ろうとした最後のカップラーメンも、ないじゃないか。腹がぐうと鳴った。
 愚痴を言う元気もない、火の始末をして体育館の自分の場所に戻る。食べる物が無いなら、無くなったなら、後は寝るだけだ。4ヶ月… もう臭いにもなれた毛布をかぶり横になる。この国がどうなるのか? そんな事は考えられない。己一人の明日の食糧さえどうなるかわからないのだ、自身の生命の存続さえ… 毛布を胸元に引き寄せ、引き寄せ、引き寄せて… 
 目が覚める。朝だからじゃない。地震じゃない振動が横になった身体を伝うから。昔、体育館だった残骸を出て空を仰ぐ。北方から斜めに光る線が夜空に、幾筋も。やがて南の地平が明るく… ムカシ、大学生の頃、聴いた講義で講師が語った昔話… 国が無くなった時、生きる為の努力はその名の通り“必死”となる、とか? ああ、待った無しかい… と余裕でボヤくフリをするけど… 
 今度ばかりはケモノやケダモノは鳴かない。野獣が吠えるだけ、祖国を、郷土を、職場を家を友人を失った野獣が、断末魔の咆哮を残すだけ… 20180416
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Author:KU2
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