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〈奉仕〉

 夜、お向かいのじいさんが家にやって来て言った。「〈奉仕〉の時期が来たんで行ってきます」 ああ、もうそんな御歳なんですか? 驚いて訊ねる。「いえね、本当はもうとっくに行かなきゃならなかったんですが、妻の介護があったんで、特例で延ばしてもらって… それで今度」 はあ、言葉が出ない。奥さんが亡くなった事さえ知らなかった。「それでお願いなんですが、鍵を…」 じいさんが言うには〈奉仕〉に行くと今の家は無人になってしまう。鍵を預ける親戚もいない。そこでウチの郵便ボックスの底にマグネットで家の鍵を隠し付けさせてほしい、という事だった。自分の家だとよくある話でドロボウだって隠し鍵を捜す。けどまさかお向かいの家に… というワケだ。なるほど。どうぞと応えて、では3年後にまた、と言った。が、じいさんは「あなた、本当に3年で帰って来れると思っておいでですか? 私は、ワタシの周りでは〈奉仕〉に行って帰って来た人など!」 …気まずい沈黙
「すみません」じいさんが言った。「少し疲れていて、お見苦しいところを…」 いえいえいえ、と応えて、で〈奉仕〉先はどちらに? と聞く。じいさんが、答える「フクシマ、福島第三です」20181006+
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Author:KU2
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