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田舎暮し

「なんだ、オマエが来たのか… 」ジイちゃんは少しびっくりしたみたいに見えたけど、言いたい事が山ほどある、様ではあったけど、それ以上は聞かないで土間に入れてくれた。 カンカン照りの太陽が真上にある一本道。左右はどこまでも続く田んぼ、ぐるりは山、そんなところをずうっと歩いてきたボクはひんやりした上がりかまちの感触と薬缶から注がれた麦茶が心地よかったけど …でも、正直ジイちゃんのこの古い家は好きじゃなかった。暗くてどこもかしこも畳か板敷きでイスがある訳じゃないからそこに直接座らなきゃならなくて座布団があっても、なんだか落ち着かなくて、食事も野菜とご飯と魚が多くて… これは何かの罰か? とも考えた。でも仕方ない、ボクはこれからここで暮らす。仕方がない、仕方がない、仕方が… ない。仕方もないけど、する事も無いここでは、やっぱり仕方ないからジイちゃんの手伝いをする。畑の草取りと、鶏の餌やりと、麦茶づくりがボクの仕事になった。でも、それで一日が潰れるわけじゃない。前は足りなかった時間がここでは嫌になるほどある。後は、ジイちゃんの家の周りを見て回る。友達になりそうな子供がいるかな? 最初は期待して探してたんだけど、ここいらにはいないとわかった。
 いたのは、オッサンだった。オッサンは河原で野宿をしてた。黄色いテントがあったんで同い年の子供だったら… と中をのぞきに近付いたら、いたのはオッサンだった。とてもがっかりした。オッサンはいつ見ても何もしていなかった。時々は食べたり寝たりしているところに出くわすんだけど、たいがいはぼぉ~っと空の雲か川の流れを見ていた。何もしないの? なんで何もしないの? タイクツじゃないの? 大人にこんな事を聞くのは失礼かなとは思ったけど聞きたくて 「したくないからしない。退屈じゃない」オッサンが話してくれた。「 …前にいたところで、それこそ働いて働いて働いて、休みの日も働いて、朝から働いて、夜も働いて深夜も働いて死ぬほど働いて… で、イヤになっちゃってさ。あんなに働く必要は無かったんだ、今思えば。こうして何もしないでもなんとかやっていけるんだから。でも、働いてないと、無能のレッテルを貼られるとオシマイ、そう信じてたんだ、怖かったんだ、オシマイになるのが」 はあ、そんなもんなんだ。ボクにはわからないよ。 …いや。よくわかる、気もする。ボクにも、必死にしがみついていたモノが、あった…  こうしてオッサンと少し話すようにもなったんだけど、モトから何もしたくない人、というか、もう何もしない事に決めた人だったんで、そんなにハナシも弾まない。もっと、もっと、話をしたかったんだけど… でも、なんだか、もう、いいか。
 その日もほとんど寝転がって雲が流れてくのを見ていたんで、そんなにしゃべらないで家に帰った。家にはジイちゃんの他にバアチャンがいた。初めて見るバアチャン。小さくて背丈はほとんどボクと一緒、シワシワでカサカサで丸めたワラバンシみたいなバアチャンだった。 「失礼なガキだね。」ありゃ、思わず声に出しちゃったのか? ごめんなさい。 「フン、まあいいさ。ホントにシワシワのカサカサだからね。でもね、こっちは許せないよ。オマエ、なんでここに来た? ジイさんもジイさんだ、なぜ追い返さなかった? まったく! アタシがたまたま見に来たから良かったんだよ。そーじゃなけりゃ、オマエずぅ~っとここで、草取りと餌やりだよ。ずぅ~う~っと! さあ! そろそろ間に合わなくなっちまう、いそいで行きな、帰るんだよ!」 え? えぇ~ もうすぐ夕方だし、途中で夜に 「そんな事言ってる場合かぁ!」 気が付くとあの一本道、もう日が傾いて夕焼けの空。急がないとじき日が沈む。一瞬ジイちゃんの家の方にもどろうか? と考えたけど、あのバアチャンが怒ってまだいて見張ってる気がして、仕方なく夕日を背にして反対の方に歩き出した。反対の方向? 反対の方向には、駅があるんだっけか? そこで電車? に乗って、そして、街? どこに帰るんだったっけ? 考えても仕方ない。まあ、歩く事をやめなければいつかそこに着く、着いたら着いたところでその時考えればいい。だんだん暗くなってくる、でも歩く。いつかは、そこに、着く。きっと、そこに、着く。そこに。
 …ここは、どこ? 20200711-2
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Author:KU2
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