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夜の蟹

 友人の見舞いに行く。病院のインフォメーションで入館許可申請書に必要事項を記入し、身分証を見せ、やっと病室を教えてもらい、エレベータで指示された階へ上がる。フロアの案内で病室へ、と思っていたが、指示されたエレベータで指定された階に着くと友人の奥さんが開いた扉の前にいた。やけに、暗いな? 扉が開いたときにそう感じた。深々と頭を下げる奥さんに挨拶をした。アイツどうです? なんて何時もの様に俺は軽口をたたいた。奥さんだって知らないわけじゃないから。でも、そこで、表記できない人間の声とは思えない唸り? 叫び? 獣の咆哮の様な… でも微かなそれを聞いた。最初俺の空耳か? と思った。後は静寂。怖いほどに静かなトコロだ。そういえばこの階は「特殊集中治療室」 そしてエレベータホールのイメージが、なんというか、虚飾を取り払った病院のイメージ… いや、ここは病院なんだけど… 再びあの獣の様なあの… 今日は、薬が効いていてあの人は寝ていますから、アイツの奥さんが話す言葉が俺の思考を遮った。あ。 …じゃあ、また来ます、今日はこれで。挨拶をして見舞いの品を渡して、先ほどから扉が開いたままのエレベータの箱にもどる。すがる様な目付きで俺を見ていた奴の奥さんとは、いや友人ともそれ以来会っていない。俺は昔からKY=空気読めない男だったけど、たぶん完璧な防音設備として造られたあのフロアで微かではあったが聞こえた友人の、でも獣の様な叫び。何が言いたいか解かって… アレハ、オレノナマエダ… なぜ俺がそこにいたのが解かったか? そんな事は、解からない。だから、 …聞かなかった。いや、あそこへは行かなかった。会わなかった、誰にも。今この国で本当に何が起きているのか、何が失われているのか… 知りたくはない。あれから… 俺にも“要精密検査”の通知が届いた。年に一度の健康診断は国民の義務だからな。1年前のあの友人と同じく。こめかみのしこりを撫でながら、今はまだ微かな胸の痛みと不安を抱き、行く末を考え様として考えられない。 …これからの事? 20150618-3
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Author:KU2
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