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図書館員は今日も憂鬱

 ちょっと… 嫌だった。「サベツすんの?」コクビを傾げて可愛い少し哀しげな声で、声優は ―存在するとしたら― ゼッタイ女性、しかもプロ。でも声の主は… 怪獣。どう見ても図鑑のティラノサウルスに似てる、ゴジラ色した、何年の映画の? なんてマニアックな質問すんなよ、俺今スゲー非常事態宣言中なんだから、聞いたら張っ倒す。「ですからお客様の体格は当館の設計上想定されておらず、お客様や他のお客様にご迷惑が…」しまった! 「ああ、うれしい、お客様と認めてくれたのね、じゃ…」 館内に進もうとするカイジュー様を身体を張って引き留めて「すみません、すみません、もうちょっとお待ちください!」 あああ! ここは市立の図書館。さっきからモメてんのは、カイジュー野郎が ―声は女性だけどね― やって来て、館内に入れろとゴネてんの。まあ、もうカウンターまで入って来てんだけど軽自動車くらいの大きさのカイジューが… 今日は日曜日で管理職は出勤してない。司書2人とあとは臨時職員で図書館を回している。事務室ではその同僚が館長と副館長と生涯学習課の課長や部長に連絡を取ろうと躍起になってるけど、たぶん無駄だ。「カイジューの方が来館されたんですけど入れていいでしょうか?」本気にするか? 俺が館長だったら意地でも本気にしないね。後で「まさかホントだとは思いませんでした。今後組織内の報連相をテッテイテキニ…」って逃げるね、当り前だ! 常識だ! この国では。でも現場で働いてる俺達は… 「オキャクサマ、なら入って当然でしょ、ホラ、言うじゃないオキャクサマはカミサマですぅ! って」 あの演歌歌手コロス! 「ハア。ですが、お待ちください。どう見ても書架の間隔より御客様の、ああ、いえ、アナタ様のサイズは…」 失礼ね! 女性に ―カイジューは女性だと判明した、今後対象を“彼女”と呼称とする― サイズの話をするなんて… 騒ぎ出すカイジュー、いや“彼女”、あああ、どう対応したら良いのだ! 女性にサイズの話をするなんてセクハラとか、サベツとか… 言いたい事を言いたい放題! あああああああああ! どうしたら! 事務室から伝令が駆けてくる、館内は走っちゃダメと騒ぐ子供にイッツも注意する立場だけど今回だけは目をつぶる、許す。 「あの…」息を切らせる臨時職員のヤナギダさんに、指示は来たか? と聞くが、「まだです。ところで自衛隊呼ぶのってどうでしょう?」 バカ! “彼女”がどんだけ耳がいいかは… 「ンマアアアアアァ! オキャクサマに対してぇ、自衛隊を呼ぶぅ? キイイイィイ!」ズン! 振動いや、衝撃が走る“彼女”の太い右足が(ああ、女性に対して失礼だろうか?)踏みしめているタイルの床にピシ、大きくひびが入る。そんで明らかに床が沈んでる。館内の、ニンゲンのお客様はすでに全員館外に誘導され、職員以外は無人だけど… ドウスル? …あ! 閃くモノがあったんで、ダメで元々と試してみる。「御客様!」 5分後彼女は去ってゆく。夕陽を背に浴びて。「終」って巨大な白抜きゴシック太字でかぶさらないのが不思議なくらいのイチニチだった、まだ閉館時間までには1時間20分あるけどネ。「なんだったんです?」“彼女”を見送る俺の後からヤナギダさんが訊ねる。ああ、“彼女”の読みたい本はここには無かったんだ、それだけ。どんな本ですか? とヤナギダさんは聞くけど、読書の秘密もあるし… ウププ、想像したくない事もあるし… ま、忘れよう、今日あった事は。と俺は言ったケド、事務室にもどると今頃連絡の取れた館長からのメモがセロテープで机に貼ってあった。メモは「タイヘンでしたね、ゴクロウさまでした。今回の事の報告書と施設及び備品の破損状況の確認をヨロシクお願いします❤ 館長」 あああああ! 組織への愛はいつだって片思いさ! 20150730-2
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