FC2ブログ

キツネはキツネ

「ここでお別れだ」
 キツネは振り向いて言った。お別れだね、幼い俺はうなずく。泣いてるのをキツネに知られたくない、こぶしを握る。草原はそこで終わり、目の前には黒い森が立つ。キツネは続ける。俺はキツネだ、俺達が、俺の種族がキツネなんじゃない、俺がキツネなんだ。解かるか? キツネは子供の俺に何かを伝えたいのは解った。でも、解かんない。俺は言う。
 おまえらがキツネと言う生物の最後の1匹が死ぬまで俺は生きているんだぜ。俺がキツネで、キツネが俺だ。俺は死なない、キツネが生きている以上俺は不死だ。おまえたちが個を創造して死を受け入れた様に、キツネは個を捨て、永遠を手に入れた。だからさ、おまえたちが死んで墓を作る意味が解らないんだ。キツネは笑った。俺は笑わなかった。でも俺にとってはお前はキツネじゃない、おまえだったんだ、おまえだけだったんだ。別れを引き延ばすだけの無駄なおしゃべりだ、俺は解っていたけど、でも。
 楽しかったさ、俺のたった一匹のキツネは応えてくれた。でもそれは重い。俺はおまえのキツネじゃなくてもキツネさ、おまえはこの黒い森でキツネに出会えばそれは俺さ、俺なんだ、そう言ったキツネは尻尾を振って森に消えた。俺は泣いた、が、それが懐かしく思えるころ、キツネの言葉の意味が少し、解った。20150404-3
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

プロフィール

Author:KU2
 改行が嫌いです。嘘とイイカゲンが好きです。…改めまして、FC2ブログへようこそ!

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR