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ひとり

 姉とふたり家へのかえり道。霧が深い林の中の道。うしろに足音? 振り返る。髪の長いお腹の大きな女の人が跡をつけてくる? はや足にすると女の人もスピードを上げる。追いかけられている。逃げる姉と私。家はすぐそこ。逃げ込む家。鍵をかけ、一安心。でも不安を拭い去れない。押入れに隠れる。ドアの鍵を開ける音、おかあさんだ! と私。姉が言う、違う、静かに、女の声がする、「わかっている、わかっているのよ。」押入れを開けられる。女ともみ合いになる姉、助けようとする私、腕に痛みが走る。私は気が遠くなる、何もかもボンヤリ。姉が叫び、女は姉にナイフを向ける。が、固まったように動かない女、倒れる。背中にナイフ。死ぬ女。母がいる、立ち尽くす母。そして産声。死んだ女から生まれる赤ちゃん。この女の人のお墓をつくりましょう。赤ちゃんは育てましょう。姉「こんな事がまたあるなんて」 母「3度目よ」わたしにとっては意味のない会話。わたしに妹ができた。かわいい妹。もう昔の記憶、時折腕の傷が私を過去に引き戻すけど成長した私を傷つける力もない小さな刺。
 妹とふたり家路をたどる。霧深い林の中の道。後ろに足音、振り返る。髪の長いお腹の大きな女が跡をつけてくる。歩調を上げると彼女も上げる。追いかけられている。昔を思い出す、もう治ったはずの腕の傷がうずく。あの時私は… 妹を急がせ逃げる。家はもうすぐ。逃げ込み鍵をかけ、一安心。でも私は不安を拭い去れない。押入れに隠れる。ドアの鍵を開ける音、妹が叫ぶ、おかあさんだ! 私は妹を押さえる。違う、静かに、女の声がする、「わかっている、わかっているのよ。」押入れが開けられる。女ともみ合いになる私、助けようとする妹、ナイフが妹に。妹が倒れ込む。私は叫び、女は私にナイフを向ける。固まったように動かない女、倒れる。背中にナイフ。死ぬ女。母がいる。立ち尽くす母。そして産声。死んだ女から生まれる赤ちゃん。お湯を沸かしたりタオルを用意する。この女の人のお墓をつくりましょう。赤ちゃんは育てましょう。私はつぶやく「こんな事がまたあるなんて」 母「3度目よ」気が付いた妹は、赤ちゃんを見て「妹ができた」と笑う。もう昔の記憶、時折昔の腕の傷が私を過去に引き戻すけど成長した私を傷つける力もない小さな刺。
 ひとり家路をたどる。成長した私は仕事に付き、子供もいる。ダンナサマはいないけどね。霧が立ち込める林の中の道を急ぐ。今日は遅くなってしまった。子供達はもう家に… 日の落ちた林を見回し、昔を思い出す。忘れていた古い腕の傷がうずきだす。あれは… 道を走る。家に着く。玄関は開いたまま、押し入れの前で見知らぬ女が、手にしたナイフを振りかざす先にいるのは私の… 足元には下の娘が、腕から血が流れ… お守りのようにいつも持っているナイフ、まさかこんな使い方をするとは。死ぬ女。茫然とする私。そして産声。その後の作業が私の正気をかろうじて留めた。タオルにくるまれた赤ん坊を見て上の娘がつぶやく「こんな事がまたあるなんて」私が応える「3度目よ」そして、腕に包帯を巻いた下の娘が、さいわいに軽傷だった下の娘が「妹ができた」と笑う。だけど…
 月日は流れる。一時的には正気を保った私だったけど、人の身体にナイフを突き刺し殺した、その事実が私を蝕んだ。私が私でなくなっていく、私は。私は道を歩いている。夕闇が迫る、霧の深い林の中の道。前を歩く少女たちが見える。姉妹なのだろうか仲良く喋りながら、と、その声が消える。私の存在に気が付いた2人は足を速める。違う、私は、声をかけようと私も歩調を上げる。走り出す2人、これは、この場面は? なぜか腕が切られたように痛む。これは… 2人が駆け込んだ家。私は知っている。玄関には鍵がかかっているが、問題は無い。私のポケットには鍵が、ある。開錠して家の中に入り、「わかっている、わかっているのよ。」つぶやく。隠れている場所は、私達の隠れた場所は。怯えた顔の子供達、私、私は… 姉と思われる子供に手を伸ばすが、妹らしき娘がむしゃぶりついて来る。思わず払った手にはナイフ、いつもお守りにしているナイフが、そんなつもりではなかったのにいぃぃ… 瞬間、背中に激痛が走り視界が狭まり、意識が消えて、私は死んだ。

 せまい せまいけれど あんしんできる あたたかいばしょに 私はいる。けれど 私は ここから でていかなければ ならない。もっと せまい くらい とんねるをとおって。 …いま 私は うまれた。 20160214
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